自己所有以外の建物を増改築した際に必ずやるべき1つのこと!

こんにちは、顧客に有益な情報を提供できるよう日々勉強に励む、ファイナンシャルプランナー1級技能士のcoco13世です。

親や身内と同居する際、よく見受けられるのが、既存建物(実家)の増改築です。

これまで、200件以上の住宅ローンを取り扱ってきた現役の融資担当者ですが、リノベーションの流行りに伴い、このような案件も増えてきた感触はあります。

 

今日は増改築の資金を、既存建物の所有者と、異なる者が支払う場合の注意点についてお話します。

 

結論から述べると、建物の所有者以外の者の資金で、増改築をした場合は、

 

増改築費用と不動産評価を基に、所有権持分割合を変更しておかないと、その建物の所有者に、贈与税が課せられます(>_<)

 

例えば親名義の建物を、子の資金で増改築する場合は、

建物を「適正な持分割合」にしておかないと、親が贈与税の対象となります。

 

本記事では、贈与税を回避する方法や注意点について、分かりやすく述べていきます(^^)/

 

なお、本記事は個人間で行うものとします。(法人の場合は話が変わります。)

 

なぜ贈与税の対象になるか

贈与税に束縛

なぜ、お金を受け取った訳でもないのに、贈与税の対象となるのか。

簡単に言ってしまうと、自分の建物を、自分以外のお金で増改築してもらった人は「経済的利益」を得るからです。

 

coco13世
少し難しい内容なので、流し読みでも大丈夫です。

 

例えば僕の家を、お金持ちの方が、1億円を費やして増改築をしてくれたら・・・

僕は1億円分の経済的利益を得たことになり、贈与税の対象となります。

 

少し専門的な話をしますと・・・

 

不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。

 

これは、増改築した部分は「付合」(建物と切り離せないモノ)により、所有権は建物所有者に帰属するという意味です。

 

せっかく僕の家を、お金持ちの方が、1億円を費やして増改築してくれても、お金持ちの方は「建物所有者」ではないです。

そして、1億円費やした対象物が「付合」に該当するからです。

したがって、お金持ちの方が1億円支払っても、所有権は一切取得することができません!

 

この法律に基づくと、建物所有者以外の方が増改築しても、所有権を取得できないという不利益を被ります。

そのため、その不公平を解消するために、増改築した人は建物の所有者に対し、「償金請求」(増改築資金の返還請求)ができるように、民法248条(償金請求権)で定められています。

 

対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における、当該利益の価額に相当する金額を当該利益を受けさせた者から、贈与により取得したものとみなす。

 

これは、適正な対価を払わず増改築してもらうことは、贈与として取得したと、みなす意味(みなし贈与)です。

 

増改築資金を支払った者は、その建物の所有者に対して「償金請求権」を取得します

そして、この「償金請求権」を行使しないことで、贈与(利益を得た)として扱われ、建物の所有者に対し、贈与税が課せられます。

 

では、どうすれば贈与税を回避できるのか・・・。

 

それは増改築資金を支払ってくれた方に「対価」として、適正な建物所有権持分を与えればいいのです。

 

対価と聞くと「金銭」のイメージが強いですが「不動産」も対価となります。

この回避方法は、国税庁HPにも記載されております。

 

 親名義の建物に子供が増築した場合、増築部分は建物の所有者(親)の所有物となります。この場合、親が子供に対して対価を支払わないときには、親は子供から増築資金相当額の利益を受けたものとして贈与税が課税されることになります。

しかし、子供が支払った増築資金に相当する建物の持分を親から子供へ移転させて共有とすれば、贈与税は課税されません

なお、この場合、親から子供への建物の持分の移転は、親から子供に対する譲渡となり、譲渡利益が生じるときは譲渡所得の課税対象になりますが、共有とするための譲渡及び親子間の譲渡であることから、居住用財産を譲渡した場合の特例は適用できません。

国税庁HP:親名義の建物に子が増築した場合より引用

 

 

ポイント

金銭に限らず、個人から経済的利益を得たものは、贈与税の対象となる。

所有者以外の者が建物を増改築しても、その所有権は所有者に帰属する。

 

共有名義と共有持分

不動産登記、権利

先程の続きです。

親の建物を、子の資金で増改築したのであれば、建物の持分を、親名義から親と子の共有持分(共有名義)に変更することが必要です。

 

「共有持分」にするためには、建物の「所有権移転登記」を行う必要があります。

 

所有権移転登記

 

不動産の所有者が変わった時に、新たな所有者情報を登録する手続きのことです。

不動産を売買したり、相続した時などに、お世話になる登記の一種です。

手続きは、管轄の法務局で行います。

 

共有持分(共有名義)

 

「共有名義」とは、不動産の所有権を持っている「人」のことです。

 

女の子の顔
この建物の名義人は誰ですか
coco13顔
僕と妻の共有名義です。

 

「共有持分」とは、複数の人が、1つの不動産を共同で所有している時に、それぞれの人が、その不動産について持っている「所有権の割合」のことです。

 

女の子の顔
この建物の持分はどうなっているのですか

 

coco13顔
僕が6/10、妻が4/10です。

 

ここで、最も注意しないといけないのは、建物の「持分割合」です。

 

例:親の建物価格が400万円で、子が600万円の増改築資金を払った場合

増改築前の建物時価・・・400万円

増改築後の建物時価・・・1,000万円(400万円+600万円)

 

この場合、以下のような「共有持分」にしないと、親は600万円の経済的利益を得たとみなされ、贈与税の対象となります。

 

親の持分割合・・・4/10(400万円/1,000万円)

子の持分割合・・・6/10(600万円/1,000万円)

 

仮に持分割合を親(9/10)子(1/10)にしてしまうと、親は500万円の経済的利益を得たとみなされ、贈与税の対象となります。

 

ポイント

単に「共有名義」にするだけではダメ。

「共有持分割合」まで考えること。

 

注意

以上の試算は、あくまで大雑把なもので、必ずしも正確とは言えません。

また、ここでは割愛しますが、上記の場合、親は譲渡所得の申告が求められる可能性があります。

実際に行う際には、必ず税の専門家に相談しましょう。

 

所有権移転登記の登記原因【参考】

不動産登記法による登記原因

所有権移転登記をするためには、民法又は民法の特別法に根拠がある「何らかの原因」が必要です。

頻度が高い登記原因として、「売買」「相続」「贈与」などが挙げられます。

 

また最近では、離婚の増加に伴い「財産分与」も、頻度が高まってます。

 

では今回の場合、登記原因は何になるのでしょう。

 

結論は、親が子に負担する償金債務を、現金払いに代えて、建物の所有権の一部を移転させる「代物弁済」となります。

 

債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて、他の給付をしたときは、その給付は弁済と同一の効力を有する。

 

この場合だと、

債務者=親

債権者=子

負担した給付=増改築資金

他の給付=不動産

 

大雑把に言うと、僕が友人から130円を借りていた場合、130円の金銭による返済の代わりに、130円のジュースを渡すことにより、僕の債務(130円を返す義務)と友人の債権(お金を返してもらう権利)が消滅します。

 

ちなみに友人に渡すジュースは、100円でも150円でも「代物弁済」は成立します。

 

しかし、その場合は税務上、贈与とみなされるので注意が必要です。

 

既存建物の評価が低い場合【朗報】

古い家

ここまで、建物の「所有権持分割合」「登記原因」「贈与税」「譲渡所得税」など、いろいろ難しく感じるところが、あったと思いますが、シンプルな方法もあります。

 

それは工事完了までに「贈与」で、全ての持分を「増改築資金を負担する子」に変更してしまうことです。

 

親からすれば、贈与で建物を手放せば、譲渡所得は発生しません。

多少贈与税を払ってでも、増築前に持分をすべて子に贈与してしまう。

これが一番シンプルで、お勧めです。

 

例えば、建物評価200万円であれば、基礎控除110万円を差し引いた90万円が、贈与税の対象となります。

90万円であれば、贈与税率は10%なので、9万円を申告して完了です。

 

なお、贈与税は「その年の1月1日から12月31日までの1年間」に、贈与によりもらった財産で計算されます。

 

したがって上記の例の場合であれば、

 

2019年12月に100万円分贈与(→持分割合:親1/2、子1/2)

2020年1月に100万円贈与(→持分割合:全て子)

 

このようにすれば、基礎控除である110万円以内に収まるため、贈与税の対象から外れます。

(相続税精算課税適用時は、除外されるので注意)

 

ただし、贈与の税率は高めなので、親名義の建物評価が高ければ無理せず、税率や安く控除額も大きい相続時に取得すれば良いです。

 

贈与税の速算表も、参考として載せておきます。

 

【一般贈与財産用】(一般税率)

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
300万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
3,000万円
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

 

【特例贈与財産用】(特例税率)

この記事の事例のように、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において、20歳以上の者(子・孫など)※への贈与税の計算に使用します。

対象が限定される分、控除幅は優遇されます。

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
4,500万円
以下
4,500万円
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

 

登記の流れ【重要】

建物図面と登記

登記上の流れについては、以下の通りとなります。

なお、ここでは親の建物について、子が増改築を行い、増改築借入金を住宅借入金特別控除として、適用させる場合です。

 

  1. 子の単独所有名義、または親子共有名義とする
  2. 増改築による床面積等の表題部変更登記
  3. 所有権持分割合の調整

 

この中でも③が一番重要です!

 

①子の単独所有名義または親子共有名義とする

 

住宅借入金特別控除を適用予定であれば、必ず「工事着工前」までに!

自己資金で、当初に持分割合変更を行うのであれば、工事完成までに済ませしょう。

 

自己資金で行う場合は、ここをスルーという選択もできます。

 

贈与基礎控除額である110万までの範囲内で、持分割合を変更すれば、対象となる税は「登録免許税」と「不動産取得税」のみです。

 

住宅借入金特別控除を適用予定であれば、工事着工前に行う必要性については、この記事を参照してください。

(不動産取得税や登録免許税も、軽く触れています。)

 

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②増改築による床面積等の表題部変更登記

 

増改築により、面積や用途(店舗・居宅→居宅)が変更した場合、表題部変更登記が必要となります。

時期としては、工事の目処が付いた時ですが、詳細は業者に確認しましょう。

変更がなければスルーです。

居宅を改装程度なら、該当しない可能性が高いです。

 

登記の順番として、表題部変更登記が完了してから、所有権移転登記や銀行の担保設定となる(根)抵当権設定登記となります。

 

金融機関で担保設定を行う際、先に表題変更登記が完了している必要があります。

そのため、最終金支払い日(=(根)抵当権設定日)から、逆算する必要があります。

登記申請して、即日完了ではないので注意しましょう。

 

なお「表題部」登記は、所有権などの「権利部」の登記を扱う司法書士ではなく、土地家屋調査士が担当となります。

ただ、手間の割には費用が高いので、自身で行うことをお勧めします。

 

申請可能な状態になったら、速やかに行いましょう。

個人申請の場合、専門家より完了に時間がかかることが多いです。

 

表題部登記

一筆の土地または一個の建物ごとに作成される登記記録のうち、土地・建物に関する物理的状況を表示した、表示登記が記載されている部分のこと。

土地に関する登記記録の場合、「表題部」には「所在」「地番」「地目」「地積」「原因」「所有者」が記載されています。

建物に関する登記記録の場合、「表題部」には主たる建物の「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」「原因」「所有者」が記載されている。

さらに付属建物についても同様の内容が記載されています。

 

表題部登記は、所有権などの権利部登記と違い、登記が義務です。

 

1  第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。

※第四十四条第一項第三号は「建物の種類、構造及び床面積」です。

 

義務なので、最高10万円の罰金があります。

義務のせいか分りませんが、表題部登記については登録免許税は発生しません。

 

③所有権持分割合の調整

 

①で子の単独所有にした場合はスルーです。

時期としては、工事完了して最終金を支払う時です。

 

ここで所有権移転登記(お勧めの登記原因は「代物弁済」)を行わないと、親が贈与の対象となります。

 

また、持分割合の変更により、贈与税の対象を回避しても、旧持分の兼ね合いで、親に譲渡所得が発生する可能性があるので、必ず事前に税の専門家に相談しましょう。

 

なお、ここでも登録免許税と不動産取得税は対象となります。

おわりに

今後も、身内名義の建物をリノベーションする案件は、増えてくると確信しております。

一方、ここで紹介した内容について、理解されている不動産業者や銀行員は多くないと思います。

だからこそ、自分以外の建物を「自分の資金」で増改築する際は、正しい税や登記の知識を、身に着けておく必要があります。

 

恐ろしいのは、贈与税の知識不足故に「無申告加算税」や「過少申告課税」が課されること!

 

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

 

住宅ローンやリフォームローンで、増改築を検討されている方は、こちらも必ず読んでください。

知識が欠けていると、住宅借入金特別控除が適用されません。

 

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免責

記事の内容は、投稿時点での税法その他の法令に基づき記載しています。

また、分かりやすさを重視して厳密ではない解説をしている部分があります。

本記事に基づく情報により実務を行う場合には、必ず専門家(税理士、司法書士、土地家屋調査士、税務職員等)に相談のうえ行ってください。