本記事では1989年から1996年のジャンプ黄金時代に連載されていた、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』の名場面についてお伝えします。
タイトルの通り、ドラゴンクエストをモチーフにした漫画ですが、アバンストラッシュやメドローアといった作品独自の技や呪文もいくつかあります。
シナリオは原作と同じくシンプルで、勇者が魔王を倒すお話ですが少年ジャンプの三原則「努力、友情、勝利」もしっかりおさえており、単行本全37巻にも関わらず、名場面がとても多いのがダイの大冒険の特徴です。
そんな数々の名場面から厳選した20選を時系列順で紹介します。(想定外に長くなってしまったので本記事では前半10選を紹介)
ダイの大冒険 名場面1・・クロコダイル戦(2戦目)
ダイの大冒険4巻67Pより引用
小さな勇者たち
己が身の可愛いさにダイの育て親を人質に取り、勝利を得ようとしたクロコダイン。
一方、仲間のために命懸けで立ち向かい、ダイに後を託す未熟で非力なポップ。
そんなポップを見たクロコダインは「この勝利は男の誇りを失ってまで得る価値なのか」と戸惑います。(人質作戦は妖魔司教ザボエラの策)
最終的にはダイに敗れますが、最後にクロコダインは上記画像の通りダイとポップを高く評価します。
…おまえたちのような相手に敗れたのであれば全く悔いはない…
むしろ誇るべきことだ…
敗北して瀕死にも関わらず、相手(見下していたポップを含む)を最大限評価するクロコダインの武人としての心情が伝わってくるセリフでした。
負かした相手に、ここまでのセリフを言える者がいるだろうか…
クロコダインは全キャラ中、最も愚直で熱い漢です。
ネット上でも一番ネタにされるぐらい熱いワニ野郎、もしくはピンクいワニ野郎です。
ダイの大冒険 名場面2・・フレイザード初戦
ダイの大冒険6巻98Pより引用
恐怖の結界呪法
ダイとの戦いで苦戦するフレイザードは伝説の禁呪法「氷炎結界呪法」を使います。
氷炎結界の中では通常の5分の1しか力を発揮できず、ダイたちは形勢逆転されてしまいます。
ちなみに、禁呪法はあまりに汚い手段で、使用すると魔法使いの間では仲間外れにされます。
力を出し切れないダイが「正々堂々と戦えないのか」というセリフに対して、フレイザードは上記画像の通り自身の理念を回答。
オレは戦うのが好きなんじゃねぇんだ…
勝つのが好きなんだよォォッ!!
フレイザードは暴虐で何よりも勝利を第一に考える、最も分かりやすい悪役です。
女性の顔を燃やしたり、不意打ちでマァムを殺そうとしたり、ミストバーンから授かった力に溺れミストバーンを逆に倒そうと企んだり、徹底的な悪役ぶりです。
また、フレイザードは勝利と栄光への執念もすごいです。
これは自分が生まれてから日が浅く歴史がないため、焦っていたところもあります。
フレイザードは同じ悪役でも人気があり、妖魔司教ザボエラとは一味違う感じでしたね。
ダイの大冒険 名場面3・・ハドラー不意打ち
ダイの大冒険13巻41Pより引用
帰ってきたマァム…!!?
度重なる失態を犯したハドラーは大魔王バーンより最後の通告を受け、窮地に追い込まれます。
勝利の手段を選んでいる余裕がないハドラーは、クロコダインと同じように妖魔司教ザボエラと手を組み、だまし討ちと不意打ちで攻めてきます。
そんな追い込まれたハドラーに対して、ポップが上記画像の通り男の戦いについてハドラーに投げかけます。
男の戦いには…勝ち負けより大事なものがあるんだってことをな…!!
ポップが上記セリフを言う前に、ハドラーに「みそこなったぜ」「残酷だけど卑怯じゃなかった」と伝えていることから、ハドラーに対して残虐な敵ながら一定の評価はしています。
最初のハドラーは魔軍司令という中間管理職の立場で威厳のない魔王でしたが、このセリフのあたりから、作者の中で少しずつハドラー補正が入ってきたような気がします。
ダイの大冒険 名場面4・・キルバーンからの逃亡
ダイの大冒険17巻118Pより引用
勇気ある撤退
ダイ&ポップVSハドラー&ミストバーン&キルバーンでは、ダイとハドラーが相打ちとなります。
ダイをハドラーに横取りされたキルバーンはダイの代わりにポップを始末しようとします。
ポップも当初は1人でとことん戦おうとしますが、自分がやるべきことは戦うのではなく、全力で逃げてみんなに状況を伝えることだと気づき撤退します。
キルバーンもポップを逃がすまいと追跡してきますが、後一歩のところでクロコダインが助けにきます。
しかし、いきなりポップを連れて撤退!!
あの勇猛なクロコダインがいきなり逃げたことに、キルバーンも驚きを隠せません!
ポップはクロコダインにダイを見捨てて逃げたくなかったと弁解しようとしますが、クロコダインはポップが仲間を見捨て逃げることなんて、よほどなことだと察したからこそ迷いなく即時撤退を選べたと言ってくれます。
そして、その後に上記画像の通り、さりげなく今の関係性について口にだします。
…そろそろつきあいも長いからな
ポップとクロコダインの今まで積み重ねた信頼の結晶とも言えるセリフ。
ポップが理由もなく仲間を見捨てることなどない!と信じるクロコダインの強い信頼が伝わる場面でした。
ダイの大冒険 名場面5・・ダイ&バランVSハドラー
ダイの大冒険21巻153Pより引用
さらば我が子よ…!!
父バランをかばい重傷を負ったダイ。
それでも二人で力を合わせハドラーと戦おうとするダイの姿を見て、バランはある決意をします。
なんとラリホーマ(催眠呪文)を使用し、ダイを強制的に寝かそうとします。
子供がどう願っても親とは常にこうしてしまうものなのだ。
最後の最後で私にも人間らしい感情とやらが目ばえたのかしれんな。
バランが犠牲になることを感じ取ったダイは、涙を流しながらバランに抵抗するも寝落ちしてしまいます。
そして、ダイを寝かしつけた後のバランの心情が上記画像の通りです。
…相変わらず…寝かしつけるのが下手だな…
バランもダイとはこれが最後だと覚悟していたに違いありません。
だからこそ、ダイの寝顔を見て妻と3人で暮らしていたときの走馬燈が巡ったのでしょう。
父としては不器用なバランが最も父親らしい姿を見せた場面です。
この場面は実際に僕自身が父親になり子供達と過ごすようになって、改めて良さが伝わる場面でもありました。
個人的にはバランの最期の場面より、この場面の方が心にグッときました。
ダイの大冒険 名場面6・・大魔王バーン戦(初戦)
ダイの大冒険22巻153Pより引用
次元の違い…!!
大魔王バーンの名言!
バーンの指先から放たれた火の粉。
その火の粉はポップのメラゾーマ(火炎系最強呪文)の連発ですら、打ち消すことができません。
「あんな小さな火の粉なのに、大魔王のメラゾーマは俺の何倍の威力もあるのか」と悔しがるポップ。
そんな悔しがるポップに対して、さらなる絶望を感じさせられたのが上記画像の場面。
…今のはメラゾーマではない…
メラだ…
メラ=火炎系最弱呪文である。
魔法力の次元の差を見せつけられた場面であると同時に、絶望的な戦力差が伝わってくる場面でもあります。
こんな敵にどうやって勝つのだと疑問に思った読者は多かったはずです。
ドラゴンボールのフリーザ様の「私の戦闘能力は53万です」と同格の名言です。(幹部のドドリアとザーボンの戦闘能力が2万5千と3万程でしたので53万はインパクト大!)
ダイの大冒険 名場面7・・大魔王バーン戦(初戦)
ダイの大冒険23巻21Pより引用
太陽を我が手に…!!
大魔王の野望の壮大さが伝わる場面です。
バーンは太陽を非常に高く評価しており(自分の魔力でも太陽は作り出せないため)、かつて神々が脆弱であることを理由として人間に地上を与え、魔族と竜を地上のはるか地底に存在する魔界に押し込めたことに不服を感じていました。
そのため、地上を消滅させ魔界に太陽の光を降り注がせようとしたのです。
そんな想いを上記画像の通り、ポップやマァムに伝えます。
…その時、余は真に魔界の神となる
かつての神々が犯した愚行を余が償うのだッ!!!!
- 大魔王の野望が数千年単位で行われてたこと
- 神々の行為を正すこと
- 地上を天井のふたぐらいにしか思っていなかったこと
大魔王のスケールの違いからポップ達は戦意喪失となります。
原作のドラクエのゲームにおいても、これほど壮大な野望を持ったラスボスはいませんでした。
ダイの大冒険 名場面8・・ハドラー処刑
ダイの大冒険23巻98Pより引用
まさか!!?の救援者
バーンに剣を折られ戦意を失ったダイ一味。
そんなダイ一味との戦いを終わらせようと、バーンはカラミティウォールという衝撃波の光壁の技を放ちます。
じわじわとダイ達に迫る衝撃波の光壁。
ヒュンケルやクロコダインが自ら壁となるも、全く止めることができません。
衝撃波の光壁がポップとマァムの元に迫ってくる間際、まさかのハドラーが助けてくれます!
ハドラーは助けたのでなく、自分の目標である打倒ダイを他の誰にも譲りたくないとのことでしたが・・・
しかし、目の前の獲物を攫われては自称寛大なバーンも許すわけにいかなく、ハドラーの部下の面前で公開処刑を行おうとします。
ハドラーの部下で最もハドラーに近い存在であるヒムも「こんな所でオシマイなのかっ」と悔しがります。(ハドラーの部下はハドラーが死ぬと一緒に死ぬ宿命)
バーンがハドラーの首を刎ねようとしたときに、なんとハドラーが白刃取りで受け止め、さらにバーンの攻撃をはじき返します。
そのときにハドラーがバーンに向かって上記画像の通り、熱きセリフを言い放ちます。
オレをなめるなァッ!!!
大魔王ォッ!!!!
自分の体内に爆弾を仕込んだ怒りもあったのですが、それ以上にアバンの使徒打倒の目的を果たすためなら大魔王をも敵に回してしまう、ハドラーの強さが描かれえた名場面でした。
武人として一皮むけ、さらにはバーンに反旗を翻したこの場面は、ハドラー名場面でも上位にランクインします。
ダイの大冒険 名場面9・・勇者一行の敗北
ダイの大冒険24巻61P、62Pより引用
最後の希望
大魔王初戦は完敗するも、なんとか一命を取り留めたダイ。
しかし、ダイは勇者という期待に応えられないことを恐れ、みんなの前から逃げ出し姿を消してしまいます。
そして、人知れず場所でどうすればいいのか苦悩するダイを見つけたポップが、不意打ちで上記画像のセリフを伝えます。
…とりあえずゆっくり泣いていてもいいぜ…
初めて挫折を味わったダイを、ヘタレで仲間を見捨て逃げ出した実績のあるポップがフォローする貴重な場面でした。
逃げ出したダイに対して、何も言わず付き合ってくれるポップの優しさが伝わる場面でもありました。
まぁ、父親を死なせ、最強の剣は折られ、竜の神より「大魔王の力は神をも上回っている」と言われれば、誰だって逃げ出したくなるし責める人もいないでしょう。
ダイの大冒険 名場面10・・ポップとマトリフ
ダイの大冒険24巻187Pより引用
ポップの苦悩
ポップは最後の最後で越えられない一線が来てしまいます。
その悩みを相談するために師匠であるマトリフの元を訪れます。
しかし、悩みの内容は自分自身の問題であり、マトリフに話をしてもどうにかなるわけでない事はポップも分かっています。
そんな苦悩するポップを見て、マトリフがうれしくなってしまいます。
最初出会ったときは、ただの鼻タレがそんな次元までたどり着いたことに!
そしてマトリフがポップに笑顔で今の心境を、上記画像の通り伝えます。
オレに”マトリフのしるし”とかいうのがあったら、とっくにくれてやってるところだ…!!
戦闘面だけでなく精神面でも飛躍的に成長したポップを、あの横暴なマトリフが認めたという心温まる場面でした。
ネタバレになりますが、ポップの悩みの本質は”血統”です。
他の漫画でも”血統”は重要な要素と言えます。
ダイ一味は血統は以下の通り。
- ダイ:正統たる竜の騎士と、王国のお姫様の子
- レオナ:カリスマ性ある王女
- マァム:両親が、かつてアバンと共に魔王と戦った仲間
- ヒュンケル:子供のころから、アバン(善)とミストバーン(闇)から、指導を受けている戦闘のプロ
- ポップ:田舎の武器屋の息子
努力で埋めることができない”血統”だからこそ、それを乗り越えていく姿に読者は共感するのです。
\後半記事はこちら/
『新装彩録版』のサイズはジャンプコミックスの単行本版と同じですが、表紙が新たに書き下ろしされ、連載時のカラーページを再現収録しているため、単行本版や文庫版の上位互換と言えます。(内容は変わりません)
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